私が賠償する必要がありますか?
質問
親戚に頼まれて、親戚が経営するブランド品販売会社の取締役になっていました。取締役と言っても名義だけで、実際には何もしなくてよく、役員報酬という名目で小遣い程度のお金ももらっていましたので、そのままにしていました。ところが先日、親戚の会社が販売していたブランド商品が贋物だったことが発覚し、購入した人たちから返金を求められ、親戚も雲隠れをしてしまいました。私は親戚の会社の業務には一切関与していませんし、商品が贋物だったことも全く知りませんでした。贋物のブランド商品の販売代金を、私が賠償しなければならないのでしょうか?
回答
購入者から請求を受けることになれば、贋物の商品代金相当額の損害賠償をしなければならなくなる可能性が高いでしょう。
●役員の損害賠償責任
取締役は、その職務を行うにあたって悪意又は重大な過失があったときは、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負っています(会社法429条1項)。そして一般的に、他の取締役の業務執行を監視することは取締役としての職責であるといえます。
●名目的取締役の責任
その当否は別として、実質的に親族だけで経営されているような会社では、代表取締役の親族が、信用増加や金銭的援助の理屈付けなどの意味もあって、ご質問者の方のように名目的に会社の取締役になっているケースも度々見受けます。しかし、たとえ名目的であっても、了解の上で取締役の地位に就いた以上は、法律上の義務と責任を負います。ご質問者の方も、名義だけとは言え、了解の上で、取締役の地位にあったわけですから、親戚の方が贋物を販売したりしないよう、その職務執行の内容を監視する法律上の義務を負っていたことになります。
●判例
判例(最高裁昭和55年3月18日判決)も、名目的な取締役であっても、他の取締役の不適切な業務執行によって他人に損害を与えた場合に監視義務違反などが認められれば、損害賠償責任を負うと判断しているところです。
●まとめ
ご質問者の方は、取締役の地位にありながら業務には一切関与していらっしゃらなかったということですから、親戚の方が贋物のブランド品を販売しないよう監視するべき職務を果たしていなかったことについて重大な過失が認められる可能性は高く、贋物を販売していたことをご存じなかったとしても、購入者に対して損害賠償責任を負うものと考えられます。