復職させなければいけませんか?


質問
当社の従業員が精神的な疾患で出勤できなくなってしまったので、当社の就業規則により休職としました。しかし、精神的な疾患は一進一退を繰り返すようで、なかなか元のようにはならないようです。ただ、そろそろ当社の休職期間も満了する時期になってきました。当社の就業規則では、復職できないまま休職機関が満了すると、当然に退職することになっています。本人は退職を避けたいようで、職場に復帰できると言って復職の希望を伝えてきました。しかし、会社としては、周囲に対する影響を考えると、本調子に戻っていない状況で職場に復帰されても、困るというのが正直なところです。本人が復職の希望を持っている場合、会社は復職させなければいけませんか?
 

回答
休職の原因となった疾患が治癒している場合には、会社は復職を認める必要があります。
 

●「治癒」の意義

休職の原因となって疾患が「治癒」したと言えるかについて、裁判例では、従前の職務を通常の程度に行える健康状態に復したときと考えられています。したがって、従前の職務に復帰できる程度に回復しているか否かで判断するのが原則です。

●「治癒」していない場合の取扱い

従前の職務に復帰できる程度までの回復は認められない場合の取り扱いについて、裁判例の判断の動向は確定していない状況にあると言わざるを得ません。

この点、最判平成10年4月9日は、職種の限定なく採用された従業員について、配置転換が可能な部署を持つ一定以上の規模を持つ会社については、本人の希望があれば、従前の職務から軽減した業務での復職を認める方向の判断を示しています。この判例を受け、直ちに従前の業務に復帰できない場合であっても比較的短期間で復職できる場合に復職を認めないで退職させることを否定する裁判例が増えています。しかし他方では、復職について治癒していない場合には復職を否定する原則論を厳格に適用する裁判例もあります。

●「治癒」の判断材料

会社として、復職を認める必要性があるか否かの判断をするにあたっては、最低限、医師の診断書の提出を求める必要があると考えます。そのうえで、必要に応じて、本人を交えた主治医との面談や、場合によってはさらに会社の指定医など他の専門家の意見を取得しておくことも検討する必要があるでしょう。


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