遺言は有効ですか?


質問
私の義理の父と母は、大変仲が良く、何をするのも2人一緒ということでした。ところが先日、義理の父の方が病気で入院することになってしまい、気弱になった義父と義母は、どちらかが先に死んだ場合は、生きている方に全財産を相続させるという遺言を2人で一緒に書いたそうです。このような条件をつけた遺言でも有効となるのでしょうか?
 

回答
条件を付けた遺言であっても、その条件が合理的な内容であれば、遺言の効力に影響はありません。しかし、今回のご質問の遺言状はそもそも無効である危険性があります。
 

遺言の方式

一般的な遺言(自筆証書遺言)は、遺言をする方が、全文と遺言作成の日付及び氏名を書いて、印鑑を押す必要があります(民法968条1項)。パソコンなどを使用して文章を作成して、これに日付や署名をして印鑑を押したとしてもそれだけでは有効な遺言とは認められませんので注意が必要です。基本的に遺言書は全文を自書する必要があります。

この方式に適合している場合には、条件を付けた遺言であっても、通常は有効なものと考えられます。

共同遺言の禁止

しかし、同一の遺言書で2人以上の方が遺言をすることは法律上、認められていません(いわゆる共同遺言の禁止、民法975条)。したがって、たとえば1人の方が全文を書いて日付を書き、もう1人の方の名前まで書いている場合(要するに、1人が2人分の内容を全部書いた場合)など実質的には1人の方の遺言書と認めることができそうな場合であっても、遺言の効力は全部について認められない可能性が高いと考えます。

判例

判例(最判昭和56年9月11日)も、同じ遺言書の中に2人の名前が書いてある場合には、1人分については遺言及び氏名を自書していないという無効な遺言がなされている場合であっても全体として遺言は無効になると判断しています。

まとめ

同じ紙ではなく別々の紙に遺言を書いて、ホッチキスなどで留めているだけの場合などは、2通の遺言状として遺言が有効となることもあります(同様の事案で遺言の有効性を認めた判例として最判平成5年10月19日があります。)が、どんなに仲のよろしいご夫婦であっても、遺言状だけは別々に作成された方が安全だと考えます。


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