転勤させるには同意が必要ですか?
質問
私の会社は、本社は東京にあるのですが、関西にも営業所があります。今回、関西営業所に欠員が生じてしまいその穴を埋めるために本社従業員を関西営業所に配属したいのですが、本人は東京を離れたくないと言っています。転勤させる従業員から個別に同意をとる必要があるのでしょうか?転勤に従わない場合には処罰してもよいのでしょうか?
回答
就業規則等に会社の業務都合で転勤させることができるという規定があって、他の従業員の方も転勤させられているなどの事情があれば、転勤する従業員の方からの個別の同意は基本的には不要です。したがって転勤の業務命令をしたにもかかわらず、これに従業員の方が従わなかった場合には就業規則の懲戒の規定に従って懲戒処分を行うことができます。
●転勤
従業員の配置転換を行うことに伴って従業員の方の勤務場所や住居地が変更することになる転勤については、労務提供先の変更を伴う出向の場合とは異なり、基本的には会社に従業員に対する業務命令権が認められています。
●判例
判例も「使用者は業務上の必要に応じ、その裁量により労働者の勤務場所を決定することができる」と会社の配転命令権を認めているところです(東亜ペイント事件、最判昭和61年7月14日)。この判例は、労働協約と就業規則に業務上の都合で転勤を命じることができる規定があって、それに基づいた転勤も頻繁に行われ、勤務地を限定する合意がなかったという事案について、会社に従業員の勤務場所を決定し、「労務の提供を求める権利」があるという判例を示しています。
●懲戒処分
懲戒処分を行うためには、就業規則に懲戒の理由、内容などが定められている必要があります(労働基準法89条9号)。
●まとめ
質問者の方の場合も東亜ペイント事件の判例の事案と類似のケースのようですので、従業員の方が同意しないとしても転勤の業務命令を発することは可能です。ただし、従業員の方の採用にあたって勤務地を限定するなどの合意がなされている場合には、転勤を命じるにあたって、本人の同意が必要です。このような場合には転勤の業務命令は無効となりますので、転勤を拒否したことを理由として従業員の方を懲戒することはできません。