私は慰謝料を請求できますか?
質問
先日、義理の姉を交通事故で亡くしました。私は義理の姉を実の家族同様に好きでした。また義理の姉は、病気で体の自由がきかない体になってしまった私の日常生活の面倒まですべて看てくれており、大変大事にしてくれていました。その後、加害者の入っている保険会社の担当者と賠償金の支払いについて話合いをしてきました。しかし、加害者の入っている保険会社からは、私は直接の被害者ではなく、義理の姉と血のつながった家族でもないため、義理の姉が死んだことについて加害者に慰謝料などを請求することはできないといわれています。私は義理の姉を奪われたのに加害者に何も請求することができないのでしょうか?
回答
義理のお姉さんを亡くしたことによる精神的苦痛に対する慰謝料を加害者に請求することができる場合があります。
●民法711条
民法711条は、被害者が死亡した場合に、被害者の両親、配偶者、子供について固有の慰謝料請求権を認めています。したがって、直接の被害者以外の方が加害者に慰謝料を請求することができる場合はあります。問題となるのは、民法711条には該当しない近親者などの場合(たとえば兄弟、内縁関係にある者など)には、その方自身の慰謝料請求権が認められないかということです。
●判例
この点について、質問者の方と同じように同居している被害者から介護をしてもらっていた被害者の夫の妹に、民法711条を類推適用して、固有の慰謝料請求権を認めた最高裁の判例があります(最判昭和49年12月17日)。なお、内縁の妻については、古い判例では固有の慰謝料請求権は否定されていました(大判昭和7年10月6日)。しかしながら当時とは社会生活環境が大きく異なってきた今日の裁判例においては、固有の慰謝料請求権を肯定されているケースも多い(たとえば名古屋地判平成21年7月29日、神戸地判平成14年8月29日など)ところです。
●本件の場合
本件の場合であれば、質問者の方は、義理のお姉さんと同居して、義理のお姉さんから介護を受けていたということですから、最高裁の判例の場合と同様に実質的には民法711条の近親者が死亡した場合と同視できるとして、準用または類推適用という方法によって、質問者の方自身の精神的苦痛に対する慰謝料請求権が認められる可能性が高いと考えられます。